冬の朝、温かいリビングから冷えた脱衣所へ。
その一歩の温度差が、思いがけない危険を招くことがあります。
「ヒートショック」と呼ばれる現象です。
急激な温度変化によって血圧が乱高下し、失神や心筋梗塞、脳梗塞を引き起こすことも。特に高齢者に多く、毎年、家庭内での事故が後を絶ちません。
しかし、家づくりの段階でしっかり対策をすれば、このリスクは大きく減らすことができます。
家全体の温度差をなくす
ヒートショックを防ぐいちばんのポイントは、「家の中の温度差をなくすこと」。
リビングは暖かいのに、廊下やトイレ、脱衣所は寒い——この温度の段差が血圧を大きく揺さぶります。
そのためには、高断熱・高気密の家が大切です。
壁や天井、床にしっかりと断熱材を入れ、窓には断熱性能の高い複層ガラスや樹脂サッシを採用。家全体を“魔法瓶”のように包み込むことで、外気温に左右されにくい快適な空間を保てます。
脱衣所や浴室も「暖かい空間」に
ヒートショックが最も起きやすいのは、入浴の前後です。
寒い脱衣所から急に熱い浴室へ入ると、体に大きな負担がかかります。
入浴前に浴室暖房乾燥機で浴室を温めたり、脱衣所に小型ヒーターやパネルヒーターを設置するのも効果的です。
お湯の温度は41℃以下に保ち、のぼせを防ぐことも忘れずに。
家全体で「ぬくもりのバリアフリー」を
最近は、家中をほぼ同じ温度に保つ全館空調システムを採用する住宅も増えています。
廊下やトイレも含めて温度の段差が小さくなることで、体への負担が軽減されるだけでなく、冬でも薄着で過ごせる快適な住環境になります。
また、気密性を高めてすきま風を防ぎ、24時間換気システムで空気を循環させることで、結露やカビの発生も抑えられます。
温かい家は、家族の健康を守る
ヒートショック対策は、単なる「冬の寒さ対策」ではありません。
それは、家族の命と健康を守るための住まいづくりです。
「どの部屋にいても同じ温もりを感じる家」
そんな家こそが、これからの時代に求められる“やさしい住まい”といえるでしょう。

